【連載小説】『えっ、転移失敗!? ……成功?(1)』第3回

【連載小説】『えっ、転移失敗!? ……成功?(1)』第3回

2018/06/21 10:00

小説サイト「ノクターンノベルズ」の人気小説第1巻まるごと公開第3回!

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プロローグ


3 転移失敗?



 陽一はトラックに撥《は》ねられて死んだはずだった。
 同時に死んだ東堂とともに正体不明の白い空間に飛ばされ、世界の管理者と称する女性に会った。
 そして東堂は異世界へ別人として転生した。
 陽一が死んだのは予定外だったらしく、元の身体のまま『定番スキルセット』という便利なスキルを付与され異世界へと転移することとなった。

 ……はずなのだが、ここはどう見ても現代日本だ。
 では、あれは事故で意識を失ったショックで見た夢だったのだろうか?

 とにかくそれを確認する必要があった。

「ステータス!」

 陽一がそう念じようが口に出そうがなにも起こらない。

 一応身体は動くようだが、長時間眠ったあと急に起き上がるのはよくないと以前テレビかなにかで見たことがあった陽一は、寝転がったままシーリングライトや脇の機器等を見て、「鑑定!」「これはなんだ?」と念じてみたが特に反応はない。
 声に出してみてもやはり反応はなかった。

 しばらくすると若い男性医師が陽一の元を訪れ、いろいろと確認された。
 まず治療費や検査費はトラック運転手の所属会社がすべて負担してくれるらしく、明日精密検査を行なうとのこと。
 事故から半日程度しか経っていないため急性肺血栓塞栓症《エコノミークラス症候群》などの心配はなく、起き上がったり歩いたりはしてもいいが、激しい運動と、病院から出るのは禁止された。

「あの、もうひとりいませんでしたか?」

「ええ。ただそちらの方は残念ながら……」

「そうですか……」

 事故現場にもうひとりいたこと、そしてそのもうひとりが死んだのは確かであるようだ。
 身元を確認したかったが個人情報に関わるので教えてはもらえなかった。
 残念な反面、病院側のコンプライアンス意識の高さに少し安心もした。

 半日ぐっすり休んだおかげか、点滴などの医療行為のおかげか、体調はすこぶるよかった。
 とにかく空腹を覚え、病院食でいまひとつ満足できなかったた陽一は、病院内の売店でサンドイッチと缶コーヒーを購入した。
 食事制限についてはなにも言われていなかったので。

 翌日、MRIやレントゲン等の検査を行ない、その合間に警察が事情を聞きにきた。
 一応覚えていることを説明しておく。

「事故を起こした運転手の人は?」

「亡くなったよ。心筋梗塞でね。事故の原因もそれ」

「そうですか……」

「ああ、これもよろしく」

 警察官から渡されたのは、加害者に厳罰を求めるかどうかの書面。
 死者に鞭打つのもどうかと思い、罰は求めない、と回答しておいた。

 試みにもうひとりの被害者について尋ねてみたが、やはり教えてはもらえなかった。

「あ、運転手の人の会社に僕の情報って……」

「警察からは伝えてないよ。そういうのは随分問題になったからね」

「ここの治療費を払ってくれることになってるらしいんですが……」

「いまはお互い会わずにそういうことができるようになってるから、安心しなさい」

 その言葉に、陽一は少し感心した。

 所持品で破損しているものがあれば補償を受けられるかもしれないので申請するよう言われたが、奇跡的に所持品は無傷、財布の中身もまったく問題なかった。

 事故についてはその後も細々と手続きがあったが、特筆すべきことはなかったので省略する。

 検査がすべて終わる頃には日も暮れていた。
 このまま帰ってもいいし、もう1泊してもいいと言われたので、陽一はもう1泊することにした。
 ただ、病院側の要望で、個室から大部屋へ移ることになった。

 陽一を大部屋へと案内すべく先導する看護師に続いて病院の廊下を歩く。

(最近の看護師さんてのは、ナース服とか着ないのな。ナースキャップもかぶってないし)

 陽一の前を歩く看護師は、半袖のウェアに九分丈ほどのパンツスタイルで、上下とも白であった。
 これも立派なナース服なのだが、陽一のイメージしているナース服というのは、上はともかく下は少しタイトな膝丈程度のスカートというものだった。

(まぁでも、これはこれで……)

 陽一を案内する看護師は、陽一と同じくらいの身長の、栗色の髪をショートカットにした女性だった。
 顔の大半がマスクで隠れているが、目だけを見るに、なかなか艶のある綺麗な人だった。

 ただ、目が綺麗でもマスクを外すと微妙な顔だということは多いので、この看護師も案外そうなのかもしれないが、かといってマスクの下を見る機会もおそらくないだろうから、陽一は彼女を綺麗な人と思うことにした。

 サイズが合っていないのか、そもそもそういうデザインなのかはわからないが、看護師の少し大きな尻のラインがくっきりと出ており、彼女が歩くたびにわずかながら揺れるその尻に、陽一の視線はしばしば誘導されていた。

(……てか歩き方エロくね?)

 具体的にどうとは言い難いが、腰のあたりの動きがなんとなく艶めかしいような気がしないでもない。

「藤堂さんごめんなさいねぇ、大部屋に移ってもらって」

 軽く振り向きながら、看護師が声をかけてきた。

「え、あ、はい?」

 看護師の尻に卑猥な視線を送っていた自覚のある陽一は、思わずあわてて、声が上ずってしまう。

「こっちの都合でご迷惑かけちゃって……」

 個室だと余分に料金が発生するのだが、そこは事故を起こした運送会社が持ってくれることになっていた。
 本来なら個室のまま、ということなのだが、緊急手術明けの経過観察で、ICUに入るまでもないができれば個室で様子を見たいという患者が現われ、変わってほしいという打診が昼頃にあったのだった。
 あとはどうせ明日まで寝るだけと思っていた陽一は、特に嫌がることもなく個室を譲っていたのだった。

「いや、べつにいいですよ」

「ふふ。そう言っていただけるとありがたいですわ」

 そう言いながら、看護師は歩みを止めた。

「おっと……」

 そのせいでうしろを歩いていた陽一は、看護師に軽くぶつかるかたちとなった。
 そしてそのとき、看護師のうなじのあたりから、ツンと体臭が漂ってきた。
 その匂いに反応し、陽一の鼻がスンと軽く鳴った。

「ごめんなさい、臭うでしょう?」

 看護師は眉根を下げて陽一のほうを見たあと、特に乱れてもいない襟《えり》を正した。

「夜勤明けでバタバタして帰れなくて、顔も洗えてないんですよ」

 そう言いながらも彼女は特に恥じる様子もなく、むしろ誘うような雰囲気を醸し出しているように感じられるのだが、それは気のせいであろうか。

「はは……。いや、まぁ、だったら俺もですよ。昨日仕事明けでそのままだから」

 と、陽一は病院で借りているパジャマの襟を軽く引っぱり、自分の胸元をクンクンと嗅ぐような仕草《しぐさ》を見せた。

「あら、私、男の人の汗の匂いは好きですよ?」

 陽一を見る看護師は目が、妖しくほほ笑んだように見えた。

「お、俺だって、女の人の汗の匂いは嫌いじゃないです」

 陽一は看護師の表情や言葉、なにより漂う体臭を受け、息子がどんどん硬くなっていくのを感じていた。
 ほほ笑んだまま陽一を見ていた看護師の視線が、ふと下に移る。

 陽一がいま着ているのは病院から借りているパジャマである。
 薄いコットン生地のゆったりとしたパジャマのせいで、屹立《きつりつ》した陰茎が股間にくっきりと浮き上がっていた。

「あら、たいへん」

 そう呟いたあと、看護師は視線を前後に移した。
 いま、廊下には看護師と陽一のふたりしかいない。
 それを確認した看護師は、すぐ近くにあったトイレの『開』ボタンを押した。
 すると、トイレのドアが自動でスライドされる。

「こっち」

 看護師は陽一の手を取ると、トイレの中に引きずり込み、即座に『閉』ボタンを押した。
 自動ドアが静かな機械音を上げながら、すっと閉まる。
 内側から『閉』ボタンを押すことで、この扉は自動的に施錠されるようだ。
 そこは入院病棟のトイレだけあって、車椅子の患者や介護人とともに入る患者のために、かなり広かった。

「あの、ちょっと」

 トイレに引き込まれた陽一は、訳もわからぬまま看護師に誘導され、壁に押しつけられた。
 そしてそのまま看護師は陽一にピッタリと身体を寄せた。
 汗の匂いが鼻腔をつき、密着した胸の感触が服越しに伝わってくる。

「ここ、このままじゃたいへんでしょう?」

 そう言いながら、看護師は陽一の陰茎をパジャマ越しにさわさわと手で刺激した。

「おぅ……」

 思わず声が漏れる。
 看護師は陰茎を触るのを一旦やめ、その手を陽一のウェストにかけると、そのままパジャマのズボンとトランクスを下ろした。
 屹立した肉棒が、ポロンと姿を現わす。

「あら、先っぽヌルヌルですねぇ」

 看護師は陽一に身体を密着させたまま、特に息子の姿を見るでもなく、再び触り始めた。
 陽一の先端からあふれる粘液を人差し指で取ると、その粘度を確かめるように人差指と親指をこすり合わせる。

「あの、看護師さん、なにを……?」

 突然の出来事に頭がついていかない陽一は、戸惑いながらも看護師の意図を確認する。
「ふふ、お嫌かしら?」

「いや、その……嫌ってわけじゃ……」

「なら細かいことはよろしくなくて?」

「で、でも……」

 この間も、看護師は陽一の裏筋を撫でるように触り続けている。

「ふふ……、藤堂さんが悪いんですよ?」

 そう言ったあと、看護師は空いているほうの手でマスクを少しだけずらして鼻を出すと、陽一の首筋にほとんど鼻先をくっつけた状態で大きく息を吸った。

「はぁん……、こんないい匂いさせてるんですもの……」

「いや、それはお互いさまというか……」

「ほらぁ、それも」

「へ?」

「長いあいだシャワーも浴びてない私の体臭をいい匂いだなんて言うから」

 看護師はマスクをずらしたあとの手を自分のウェストにかけると、器用にボタンを外してファスナーを下げた。
 ナース服のズボンは一部ゴムが入っているので、ベルトは身に着けていない。
 看護師は陽一にしたのと同じように、自分のズボンとパンツを同時に下ろした。

(く……、見えない……)

 いまいち状況を整理できないながらも、看護師の動作からパンツを下ろしたことを察した陽一は、密着した彼女の背中越しに下を見たが、わずかに尻の一部が見えるだけであった。

 それはズボンの上から想像できるとおり形のいい尻であり、一部が見えるだけでもかなり卑猥なものだったが、どうせならもっと見たいと思うのが男の性《さが》である。

「……っ!?」

 あきらめて顔を上げた陽一は、思わず息を飲んでしまった。
 顔を上げた先に少し大きな鏡があった。
 その鏡に、自分に抱きつく看護師のうしろ姿が映っている。
 そして鏡に映った尻と太もものあいだから、ぬらぬらとてかる秘部が見えた。
 少し色の濃い肉襞が看護師の呼吸に合わせるようにヒクヒクと動いており、そこからずらされたパンツに向かって、愛液が糸を引いていた。

「私のも、触ってくださる……?」

 看護師が陽一の耳元で囁《ささや》く。
 いまだになぜこんなことをしているのか理解できたわけではないが、この状況に抗う必要を感じなかった陽一は、促されるまま前から彼女の股間に手を伸ばした。

「んんっ……!!」

 ふさふさとした恥毛の感触を手のひらに感じながら、陽一が中指の腹を軽く割れ目に当てると、看護師が短く喘ぎながらビクンと震えた。

 割れ目はすでにぱっくりと開いていたようで、触れた瞬間から指がねちょりと濡れ、割れ目をかき分けるまでもなく粘膜に沈んでいく。
 熱くどろどろとした感触に指が包まれるの感じながら、陽一は中指をゆっくりと曲げていった。

「ああんっ……! 膣内《なか》に……」

 中指は抵抗なくどんどんと沈んでいき、その指先が膣内へを飲み込まれていく様子を、陽一は鏡越しに見ていた。

 ズブズブと沈んでいった中指は、やがて根本まで膣内に入ってしまった。
 指を膣内に挿れられ、少し動きが止まっていた看護師の手が、再び動き出した。
 撫でるように裏筋を刺激していた手が、今度はしっかりと竿を握り込み、ゴシゴシとこすり始めた。

 ローションもなしに手で握り込んで肉棒をこするというのは、言ってみれば普段のオナニーとたいして変わらない行為である。
 しかし、女性の柔らかく温かい手で握られ、こすられるというのは、自分でこするのとはまったく異なる感触を得られるのであった。

「ねぇ、もっとクチュクチュしてぇ」

 看護師が息を荒らげながら陽一の耳元で囁く。
 陽一はその言葉を受け、膣内に挿れた中指をかき回し始めた。

「あああっ……! 藤堂さん、いいっ……もっとぉ……!!」

 陽一が看護師の膣内をグチュグチュかき回すと、彼女はトイレの外に声が漏れないよう気をつけながら、小さい声で喘ぎ続けた。
 陽一はさらに薬指も滑り込ませ、2本の指を根本まで挿れた状態で看護師の膣内をかき回した。

「んんんんっ、いっぱいグチュグチュしてぇっ!!」

 看護師は陽一の耳元で囁くような声量でありながら、それでいて激しい喘ぎ声を漏らしていた。
 陽一に預けた看護師の身体が少しずつこわばると、それに合わせて肉棒を握る手に力がこもり、ピストン運動が激しくなる。
 鏡越しに見える看護師の秘部からはとめどなく愛液が溢れ、陽一が激しく手を動かしたせいか、尻や太ももの付け根のあたりまでベトベトに濡れていた。

「あっあっ、イクっ! 藤堂さんっ、イッちゃうぅっ!!」

 看護師の身体がビクビクと痙攣《けいれん》し始める。

「看護師さん、俺も……」

 そしてほぼ同時に陽一にも限界が訪れようとしていた。

「んっんっ、いいよっ、好きなときに、出してぇ……、んああああっ!!」

 膣内に挿れた陽一の指が、わずかに締めつけられるような感触を得た。
 そしてその後、陽一も限界を迎える。

「うっ……」

 ドビュッと精液が放出される。
 その瞬間、陽一は肉棒の先端がなにかに包まれるのを感じた。
 だが、その後何度も陰茎が脈動し、そのたびに快楽によって脳髄が刺激され、その様子を確認する余裕はなかった。

「ん……あはぁ……」

 射精が終わったあと、陽一が指を抜くと、看護師は嬉しそうに、しかし少しだけ名残惜しげに短く喘いだ。

 射精が終わり、ようやく余裕ができた陽一が自分の股間に目をやると、いつの間に用意したのか、看護師がトイレットペーパーの束で亀頭を包み、そこで精液を受けていたのだった。

「ふふ、これだと、汚れなくていいでしょ?」

 看護師はトイレットペーパーの束を器用に使って先端についた精液を拭き取ると、そのまま便器にそれを落とした。

(この人……、なんか手慣れてない!?)

 陽一が感心する中、看護師はさらにトイレットペーパーをカラカラと取り、自分の股間を拭き始めた。

(あれ、もしかして立ち位置まで計算ずく?)

 そう、看護師は行為に及んだ場所から一歩も動かず、陽一を拭いたトイレットペーパーを便器に捨て、さらに追加のトイレットペーパーを手に取ったのである。

 陽一は最初、訳もわからず行為に及んだが、どうやらトイレに引きずり込まれたあと、うまくこの場所に誘導されたようだった。
 看護師は股間を拭いたあと、ずらしたパンツからベリベリとナプキンを剥がし、さっと丸めてサニタリーボックスに捨てると、ポケットから新しいナプキンを取り出し、パンツに貼りつけた。

(いやいや、用意周到だな、おい)

 テキパキという表現がしっくりとくるほど手際よく後処理を終えた看護師は、気がつけばパンツとズボンを上げており、つい先ほどまで男と卑猥な行為に及んでいたとは思えないほど普通の姿に戻っていた。

 半ば感心し、半ば呆れたようにその様子を見ていた陽一と看護師の目が合い、看護師は軽くほほ笑んだ。

「ふふ。私が上げましょうか?」

 看護師の指が陽一の股間を指す。
 射精し、だらんと萎れた中途半端に大きいままの陰茎が、丸出しのままだった。

「ああ、いえ、大丈夫です」

 陽一はあわててパンツとズボンを上げた。

「すっきりしました?」

「あ、はい。ありがとうございます」

「ふふ、かわいい」

 そう言いながら看護師は陽一に歩み寄り、身体が触れ合う程度の位置からゆっくりと顔を近づけてきた。
 そしてさっとマスクをずらすと、看護師は唇を重ねてきた。
 柔らかく、温かい感触が陽一の唇に伝わってきた。
 数秒で看護師は離れ、すぐにマスクを戻すと、そのまま陽一の脇をすり抜けてトイレの入り口まで歩き、流れるような動作で『開』ボタンを押した。

「藤堂さん、いまなら大丈夫ですよ」

 ドアが開いたあと、廊下の様子を確認した看護師が、陽一に声をかけた。

「あ、はい」

 陽一はあわてて返事をし、看護師のあとに続いてトイレを出た。

(結局顔はちゃんと見えなかったな)

 キスの瞬間、彼女はマスクをずらして顔を露《あら》わにしたが、距離が近すぎたこともあって、しっかりとその顔を確認することはできなかった。

 しかし、それでよかったのではないかと陽一は思った。
 陽一はあいかわらず前を歩く看護師の尻を見ていた。
 周りに人はおらず、先ほどあのような行為に及んだ以上、尻を見るくらいはどうってことないだろうとの思いから、遠慮なく視線をぶつけていた。

 ナースウェアのパンツ越しに見える尻と、トイレの鏡越しに見た生尻とを脳内で重ね合わせる。
 陽一は股間に血が集まるのを感じていたが、陰茎が再び張りを戻すにはまだ少し時間が必要であった。

○●○●

「それでは藤堂さん、ごゆっくり」

 陽一を大部屋に案内した看護師は、ひと言そう言い残すと病室を出ていった。
 少しばかり名残惜しい気もするが、これ以上は求めないほうがいいだろう。
 この先もしばらく入院するというのであればともかく、陽一は明日には退院するのである。
 しかもあの看護師は、夜勤明けからこの時間まで働いている様子だった。
 さすがにもう帰る時間であろうし、夜勤明けで夕方まで働いて、翌日出勤ということも考えづらい。
 おそらくこの先彼女と会うことはあるまい。

 一旦ベッドに入ったあと、ひと眠りしようと思ったが、あの白い空間でのことを思い出した陽一は、一応確認、検証できるところはしておこうと思い直し、入院病棟のデイルームへ足を向けた。

 ここは自動販売機や電子レンジと流しがあるだけの小さなキッチン、大型のテレビと新聞各紙が用意されている公共のスペースである。
 もう日も暮れた時間帯なので、人の姿はほとんどない。
 誰に迷惑がかかることもなさそうなので、置いてあった新聞をすべて手に取り、テーブルのひとつに陣取った。
 それらの新聞にざっと目を通していき、陽一は地方紙の死亡欄に目当ての名前を見つけた。

 東堂洋一

 告別式は明日の午後となっていた。

 次に英字新聞を見てみる。
(……………………読めねぇや)

 どうやら【言語理解】スキルも発動しないらしい。
 病室に戻り、所持品を確認する。
 といっても、あの日着ていた服と、安物のショルダーバッグに入ったスマホ、財布、タオルくらいのものだが。
 飲みかけのペットボトルのお茶もあったが、衛生面の関係で廃棄されたらしく、ひと言メモが添えてあった。

 たいしたケガがなかったおかげか、服も切られたりせず、綺麗に洗われていた。

 ふと見ると先ほどは気づかなかったが、フルーツの盛り籠《かご》が置かれていた。
 どうやら事故を起こした運転手の人が所属していた運送会社からの見舞い品らしい。
 会社の人が直接ここに持ってきたのではなく、受付で預かったうえで病院のスタッフがここに持ってきてくれたようだ。
 陽一には積極的に果物を食べる習慣がないので、同室の人たちにおすそ分けした。

「……ん?」

 果物を全部取ると、盛り籠の底に封筒があった。
 なにも書かれていなかったが、中には現金10万円が入っていた。
 特に書類らしいものやメモのようなものもない。
 こういったものを受け取ると、あとあと示談等で不利になるという話を聞いたことがあったが、無記名の封筒に入っていたものであり、受け取ったかどうかの証拠もないから、もらっても問題ないだろう。
 そう判断した陽一は、その10万円をありがたくいただくことにした。

 一応目についたスマートフォンを手に取り、異空間に収納すべくいろいろ念じてみたが、やはりというべきか、特に反応はなかった。

(やっぱ、あの空間での出来事は夢だったのかなぁ……)

第1巻まるごと公開第3回につづく

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えっ、転移失敗!? ……成功?

著者:ほーち
イラスト:saraki
レーベル:オシリス文庫


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