【連載小説第1回】『クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間』

【連載小説第1回】『クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間』

2018/07/21 18:05

GooglePlayブックス2014ベストセラー受賞作!
オシリス文庫版第1巻丸ごと公開第1回!

 ファミ通文庫での文庫化、さらには最新第6巻の発売を控え、ますます勢いに乗るオシリス文庫のイチャエロの大人気作『クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間』第1巻を全6回に分けて期間限定丸ごと公開!

クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間 クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間 (オシリス文庫)

クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間
著者:桐刻/イラスト:うなさか

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◆1日目

 家出少女らしきものを拾った。

 本当なら「保護した」と言わなければいけないんだろうが。
 首から『拾ってください』なんて書いた札をさげていたら「拾った」と言わざるをえない。
 彼女はコンビニの煙草の自販機の隣に立っていた。どこかから拾ってきたダンボール製の手作り札を首からさげて。マジックで書かれた文字がやたら整っているのが印象的だった。
 俺、比良克樹《ひらかつき》はコンビニまで煙草と今日の夕食を買いに来た。
 最初は誰かを待っているのかと思ったが、持っている札の文字が目に入って思わず半歩くらいあとずさりしてしまった。
 が、見知らぬ少女に怯んで煙草が買えなかった、なんて情けない気もする。
 だからできるだけ見ないようにして煙草を買った。
 ……横からの視線がきつかった。
 そばに行って初めて気づいたが、少女はけっこう小さかった。身長もだけど胸も。段ボール札以外に持っているものはなにもなかった。
 声くらいかけられるかも、なんて思ったがとくに何事もなく煙草を買い、俺はコンビニの中に入った。
 肉と油多めの明らかに健康に悪そうな唐揚げ弁当をつかんでレジに並ぶと、透明なガラス窓の向こうでさっきの少女がおっさんに絡まれているのが見えた。
「なにやってんだか……」
 知り合いだろうか? いや会話は聞こえないがそんな気はしない。
 だけど助けようとする人間は見当たらない。
 少女の反応が気に入らないのか、おっさんのテンションがどんどん上がっていく。まぁしかし、ああいうタイプはどんな反応を返しても勝手に不機嫌になるものだ。おっさんの拳が握られるのも見えた。
 仕方ねーな。
 コンビニを出るときに、さっき買った弁当の袋をおっさんの後頭部に軽くぶつけた。

「こら、おっさん。いくら夜だからって24時間営業の店の前で暴力行為におよぼうとしてるんじゃねーよ」

「い、いや、僕はですね、このお嬢さんが危ない目に遭わないかと思って叱りつけていただけで……」

「……お知り合いですか?」

「いえいえいえ初対面です! ぼ、ぼ、僕にはぜんぜん関係ありません!」

「へー! 知り合いでもない人間を叱りつけるなんて、なかなかできることじゃありませんよー! しかしですねー、最近は勘違いされやすい世の中ですからこういうときは警察に来てもらったほうがいいんですよ? 呼びましょうか?」

「や、ぼ、僕はいろいろと忙しいから君に任せるよ、それじゃ!」

 おっさんは頭を手で押さえながら転がるように走り去っていった。
 ばーか。ヘタレ。帰り道で頭のヅラ落として泣け。
 ……さてと。
 俺はあらためて少女のほうに向き直った。
 やっぱり小さい。無地のブラウスにロングスカートというどこかの学校の制服のような恰好。きれいに切りそろえられた腰までの艶がある黒髪。外見だけはいかにもな優等生だ。
 家出少女かもしれないが平気で身体を売るようなキャラにも見えない。

「おまえもさ、こんなところでつっ立ってなきゃおっさんの人生を狂わせることもなかったんだから。もう家に帰りな」

「はぁ、でも大丈夫ですよ」

 少女は淡々と言い放った。
 お礼を言うというより「よけいなお世話だ」と言外に匂わせているような気もする。

「なにが」

「18歳ですし。それにレイプされてもバレなきゃ犯罪になりません。被害者が訴えなければいいのでしょう」

 いやいやいや、バレなくても犯罪だろう。

「家の電話番号は? 保険証も持ってない?」

「ありませんよ。わかりませんか?」

 くい、と札を見せつけられた。
 いや、わかんねーよ。
 言いたくなる言葉をぐ、と飲み込み、俺は別のことを聞いた。

「携帯電話も?」

 電話があれば家の電話くらい登録しているはずだ。履歴をたどって知り合いに連絡するのもいい。

「そのようなものは生まれてこのかた一度も持ったことありません」

「へー……」

 まぁ、そういう家もあるか。
 だからこそ家出したとも考えられる。
 箱庭育ちのお嬢様が初めての反抗期を迎え、自分なりの家出をやってみるがどこかずれてしまっている、と考えると納得できるような気がした。

「でも名前ならあります。麻友(まゆ)と呼んでください」

 麻友、と言いながら字のほうは段ボールの裏に指で文字を書きながら教えてくれた。

「苗字は?」

「さぁ?」

「…………」

 やばい。なにがどうとは言えないけど、とにかくやばい。
 扱い方がわからねー。説明書どこ?

「べつに拾ってくれないのなら用はありません。もしかしたらさっきの人、戻ってくるかもしれませんし」

 わずかに俺に向けていた視線をそらし、少女、麻友はコンビニの駐車場の真正面を無表情に、無感情に見続けた。

「あのなー、さっきのおっさんは明らかにおまえの身体目当てだろうが」

「かまいませんよ。世の中ってそういうものでしょう。ギブアンドテイク、ウインウインの関係です」

 ウインウインってそういう意味だっけ?
 どうやらここで札を持って立っているのは勘違いさせる意味もあったらしい。

「罰ゲーム、じゃなさそうだな」

「違いますよ。私の意志です」

「でもな、おっさんは戻ってこなくても警察は呼ばれるかもしれないぞ。ほら、店員がこっち見てる」

 俺はガラスの向こうでこっちを迷惑そうに見ている店員を指差した。
 といってもレジの方向からは麻友が持っている段ボール札は見えない。待ち合わせしている少女としか思われてないかもしれない。それにさっき絡まれているときも見ないふりをしていた。
 通報なんてたぶんしないな。

「それは……困りましたね」

 本当に思いつかなかったのか、麻友は途方にくれたような声を出した。

「それでは場所を移動することにします」

 どこかへ歩きだそうとした麻友の肩を思わずつかんでしまった。
 細くて小さくて、強く握れば壊れてしまいそうな肩だった。

「いやいやいや、場所移動すんなって」

 コンビニの前ならともかく、ほかの場所に行かれたら本当に犯罪に巻き込まれかねない。

「ったく……家来るか? 散らかってるけど使ってない部屋ならひとつあるから」

 正確に言えばふたつなんだが。

「なるほど、そういうことですか」

 なにがなるほどなんだ。
 理由を説明する気はないのか、麻友は勝手にふむふむと納得していた。

「飯は?」

「もう食べました」

 本当か?
 とは思ったものの聞かないことにした。なにより面倒くさい。

「……案内するよ。近くだから」

 俺がそう言って歩きだすと、麻友はおとなしくうしろについてきていた。少し安心しながらアパートに向かった。
 コンビニから5分ばかり歩けばすぐにつく、古い木造2階建てのアパートに。
 2DKで風呂、トイレは別。ただし築30年。改築を重ねているせいか意外と防音はしっかりしている。だがどことなく埃くさいし、外から見れば小汚いプレハブの倉庫にも見える。
 高校卒業して大学にも行けず、フリーターになるしかなかった俺でも払えるくらいに家賃は安い。
 階段を上りながらうしろを見た。変わらず麻友はうしろにいた。
 逃げるかな、まぁ、逃げたほうが面倒くさくなくていいんだけど、そう思いながら俺は自分の部屋の扉を開けた。
 麻友は逃げなかった。その代わり。

「わー、とても汚いですね。人が住むところとは思えません」

 などと言ってくれた。
 目の前にゴミ袋の山が積まれてるんだから言われて当然か? 臭いかもしれないが、ここで寝泊まりしてるからすっかり慣れてしまった。玄関と廊下の境目なんてとっくの昔に埋もれて見えなくなっている。

「素直な感想ありがとう」

 とてもかたづいてますね、なんて明らかな嘘よりかは気持ちいい。

「床見えるとこあるだろ。そこだけが安全地帯だ。それ以外のとこを踏んで怪我しても知らん」

「刺激的な生活ですね」

「まぁな」

 一回包丁を踏みそうになったことがあるしな。
 ゴミの山を乗り越えて、本来ならキッチンと呼ばれる場所にたどりついた。開きっぱなしのソファベッドがある、ここが俺の生活スペースだ。
 俺はゴミ袋の山兼荷物置き場にバッグやコンビニの袋を適当に投げ置いた。

「あっちの部屋、物置代わりになってるから。散らかってるけどいろいろどかせば寝れるだろ。布団もそっちにあるし。トイレと風呂はあっち」

 すぐそこにある襖を指差しながら教えた。そっちにあるのは和室だ。本当なら2室ぶんだからかなり広いはずだ。……使えるスペースは1畳ぶんもないだろうが。

「ありがとうございます。それでは」

 なのに麻友は移動するどころか、ブラウスのボタンに手をかけてあっという間にすべて外し、ブラウスを脱ぎ捨てた。

「ちょ、いきなりなに脱ぎだしてんだよ!」

「だってこういうことするため、でしょう? 私に声かけてきた人を追い払ったのもこういうことするため」

 あー、コンビニで言った「なるほど」って『なるほど、あなたが私の新しい客なんですね☆』のなるほどかよー。
 麻友が小さい身体で俺を見上げる。
 白い肌に薄いピンクの無地のブラ。胸はそんなに大きくなく、手のひらで包めば覆えてしまえそうだ。肉というものはあまりついていないのにところどころが少女らしい丸みを帯びている。

 いつものゴミだらけの生活空間のなかに半裸の少女が立っている。

 ひどい幻覚を見ているようで、それだけで理性が吹っ飛びそうだ。

 慣れてるんだろうか。ならいいんだろうか。いやよくないだろ。
 と思いつつ肩に両手を置くと……震えていた。

「……おい、震えてるぞ」

「……寒いんですよ」

 ここで凍えるんならとっくの昔に凍死してるわ。むしろ夏がすぎたばかりだから外で全裸で寝てもせいぜい風邪をひくくらいだ。

「じゃあ服着れば」

「残念なことに、私の服はこれしかないんです。だから汚されると困るんですよ。着たままがいいのでしたら服の代金をいただくことになりますが」

「そういうことじゃなくって……」

 俺はそこらへんにあった毛布を麻友に放り投げた。

「寝ろ。俺は明日早いから寝る。騒いで起こしてみろ、即叩き出すからな」

「……くさいです」

「文句言うな。家なき子」

 ソファベッドに寝転がってうしろを見ないようにした。
 しばらく明らかな寝たふりをしていると、背中に「ごめんなさい」と小さく声をかけられ、襖が開いて閉まる音がした。

 「ありがとうございます」じゃないのか。どっちでもいいけど。

 なにか忘れてる気がした。

第1巻まるごと公開第2回は下記リンクから!

●【連載小説第2回】『クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間』

著者・桐刻先生インタビュー記事はこちら!


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クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間

著者:桐刻
イラスト:うなさか
レーベル:オシリス文庫


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