【連載小説第1回】『 ハーレム! ちっちゃな魔王の淫らな後宮(1)』

【連載小説第1回】『 ハーレム! ちっちゃな魔王の淫らな後宮(1)』

2018/09/21 18:02

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人気小説第1巻大増量お試し読み第1回!

 物静かで女子力高めな魔王子が、淫魔の艶本をきっかけに本能に目覚め美女喰いに乗り出す期待の新シリーズ『ハーレム! ちっちゃな魔王の淫らな後宮』第1巻の大増量お試し読みを全4回に分けて公開しちゃいます!

ハーレム! ちっちゃな魔王の淫らな後宮(1) (オシリス文庫)

ハーレム! ちっちゃな魔王の淫らな後宮(1)
著者:紫/イラスト:月猫

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■序Ⅰ 無欲な魔界の王子

「さ……今日も綺麗に咲いてくれよー?」

 早朝、広い庭園の片隅で、白いコートを着た小柄な青年が明るく笑っている。服と同じ色のハチマキを頭に巻いた彼は、花壇の前に立ってジョウロを片手に、色とりどりに咲き誇る花へ水をあげていた。
 このうえなく無邪気で、能天気な声を出しては花弁のひとつに指を添えて優しく撫でる。
 血色のよい肌色は若々しさとエネルギーに満ち、元気があふれんばかりの様子である。
 かわいらしい顔つきの瞳は黒目が多く、パッチリと開いている。胸を張り、たたずまいこそは堂々としているが野心のなさそうな、いたって無害な存在であることが見てとれる。髪の毛はサラサラとして短く、服のボタンもひとつひとつがキッチリ留められており、身だしなみにも気を使っていることがうかがえる。
 楽しそうに笑顔でガーデニングに力を注いでいる一方で、この庭の外には荒れ果てた大地が広がっていた。空には暗雲が立ち込め、雷がとどろき、風が音を立てて吹き荒れている。
 彼のいる庭はそんな劣悪な環境からなんの影響も受けず、砂漠の真ん中にあるオアシスのような潤いに満ちていた。
 つまり、この庭とそれを覆うように建てられた宮殿はひときわ異質な存在として大地の上に陣取っている。
「ユアン様? またこのようなことをして……」

 庭へと続く扉から、女性の声が響く。ユアンと呼ばれた彼は振り向くと、空いている手を振りながら声を出した。
「あ! オニキス、よく来たね。見てよ、ようやく花が咲いたんだよ! これだよ、コレ! 早く来てよっ」

 元気よく笑うユアンに、オニキスは大きなため息をつく。艶のあるストレートの銀髪を腰まで伸ばし、前髪をちょうど真ん中で分けている。それが知的な小顔にとても似合っており、遠くから見ても美人だと感じ取れるだろう。黒縁の眼鏡をかけ、左右の耳の上からは白い角が天に向かって伸びている。服装は質素なメイド服で、無駄がいっさいない着こなしから真面目な性格であることがひと目でわかる。
 彼女はその知的な顔を歪ませ、最近悩みの種である相手を眺めた。
 ユアンとオニキスが住む魔界『シャイターン』は、ひとりの魔王が魔族の頂点に君臨する、暗黒の世界。混沌とした世界を統治し、れっきとした文化と歴史を築いてきた。農耕、魔法、鍛冶、産業。個性的な魔族たちをコントロールし、魔界をよりよい方向へと導いていく。
 それが、魔王の役割であった。

 しかし今、魔王はいない。

 先代の魔王が急死し、魔界を治める者がいなくなってしまったのだ。
 亡くなる前の王は、いくつもの世界を滅ぼし、手向かう者を片っ端から惨殺し、気に入ったものを根こそぎ奪い取るまさに悪の権化だった。謀殺をもくろむ野心に満ちた魔族もいた。だが、それらを跳ね除けてこその魔王であり、畏怖と尊敬に足る魅力が備わるのだ。魔族はそんな魔王についていき、その力と世界を発展させていく。ただ、先代にはたったひとつだけ純粋な部分があった。
 それは、自身の妻と子にだけは甘かったということ。
 魔界の長い歴史のなか、魔王は複数の女性を妻として娶《めと》ることがほとんどだった。子をたくさん残し魔界を率いていくための後継ぎを作ることは、魔界を治めることと同じくらいの大切な仕事。為政者、魔王として有能な先代ではあったが、唯一その仕事だけをおろそかにした。
 妻とは純粋な愛情を育み、夜の営みは数十年に1回程度。はたから見て、目を覆いたくなるような純粋な関係だった。これは時として魔界の笑い話にもなったが、ようやく生まれたのが息子ひとりであったならば笑えない。

 それも、毒気のない無邪気な王子ひとりだったとすれば大問題だ。

「あなた様が父上の後を継ぐことを決意しなければ、ほかの魔族たちが魔王の座につくため戦争を起こしてしまいます! そうなれば、この場所も壊されてしまうのですよ!」

「そ、そう言われても……僕、戦いとか略奪とか、そういうの嫌いだし……君さえいてくれれば満足なんだよ。この場所も君も、僕がちゃんと守ったらいいんでしょう? 大丈夫、守ることだけは僕、得意だからっ。オニキスと、ずっと一緒にいたい!」

 魔王の息子として生まれたユアンは、戦いよりもオママゴトを好む男の子だった。生まれて幾百年経っても、それは変わらない。料理を究め、ガーデニングを楽しみ、裁縫に興じる。もちろん勉学にも励み、魔法と政治については一級の知識を持つ。
 この庭の環境も、ユアンの魔法によって保たれている。
 体格についても、背はいっこうに伸びることはなかった。魔界に住む普通の魔族は、200歳を過ぎたくらいで発育が終わり、完成された肉体となる。
 しかし、ユアンは220を過ぎても小柄なままだ。年齢による老いや発育、寿命は魔族の種類によって異なるが、この成長はイレギュラーの部類に入る。
 イレギュラーな成長、変わった趣味、桃色のメルヘンチックな住まい、無毒無害な性格。これらのことから、ユアンは魔王の息子という立場にもかかわらず、魔界の魔族たちから軽視されていた。
 それでも、ほかのことはどうでもいい。人知れぬ土地で、大好きな人と一生を過ごす。それがユアンの人生の目標であり、ただひとつの生きがいである。

「そ、それは嬉しい限りですが……」

 そんな純粋なひと言に、オニキスは頬をほんのりと赤くする。女性にまっすぐなところは父親譲り、そのほかはすべて母親譲りであると、長年ユアンの世話をしてきたオニキスは思っていた。
 だが、魔王が亡くなった今ではワガママを聞いている余裕はない。
 気苦労の多いメイドは、どうにかユアンを後継ぎにさせることができないかと考えを巡らせる。
 魔王になるにはそれなりの実績を示す必要がある。実績にはさまざまなものがあるが、誰もが認めるのがほかの世界を滅ぼすことだ。
 平和に過ごす人々の幸せを徹底的に破壊し、恐怖と絶望のどん底へと突き落とす。それが魔王にもっとも似つかわしい仕事であり、そのイメージが魔族のあいだにも染みついている。これが実績の最低条件といっても過言ではない。
 そう考え、オニキスはユアンに視線を移す。瞳は星のように輝き、花の香りに誘われてきた蝶と楽しそうに戯れている。アレが世界を滅ぼすなどと、どう考えても想像がつかなかった。
 次に、貴重な宝を略奪してくること。
 もちろん、宝であればなんでもいいというわけではない。誰もが見て心を奪われるような美術品だったり、不思議な性質を持つ金属だったり、珍しい生物の一部だったり──そういったものを複数品持ってこなければ、魔王として認められることはないだろう。品ひとつで魔族全員の心をうならせるものなど、皆無に等しいのだから。
 オニキスはユアンを見て、地道に花に水やりをしている光景に目を覆う。コツコツした努力で欲しいものを手に入れる生真面目な性格の主に、誰かからものを奪ってくるなんてとうてい無理な話である。
 その次は、強い魔物を配下に加えること。
 それはドラゴンだったり、巨大なイカだったり、強大であればなんでもいい。ただし、この魔界には剣のひと振りで大地を消し炭にする猛者《もさ》がごまんといる。たとえ強い魔物を従えることができても、魔族によって倒されてしまっては意味がない。何匹も配下にするのならまだしも、1匹や生半可な魔物では実績として認められない。
 ユアンはペットを飼ったことがない。それは、魔物も動物も、自然のなかで生きるのがいちばんという考えにのっとったものだ。オニキスは、目の前が真っ暗になりそうなのを必死にこらえた。

「ねぇ、大丈夫……?」

 従者の気苦労も知らず、小さな魔王(候補)は上目遣いで彼女を見上げる。相手が考え込んでいるあいだに近づいたのだろうが、なんの気配も感じさせず接近するところは魔王の子供たる実力だろう。

「本当に。実力はあるはずなんですが、ね」

 心配そうな視線を向けるユアンの頭を撫で、オニキスは苦笑を浮かべた。実力があることはわかりきっている。問題は、その力を発揮させる原動力となる欲望がないことだ。
 過去の魔王たちには、なにかしらの強い欲があった。
 もっと魔界をよくしたい、山のように財を築きたい、とにかく力が欲しい。誰もが欲望を糧として力をふるってきたのだ。ユアンも、なにかしらの強い欲望を持っているはずなのだが、オニキスはそれを見抜くことができないでいた。

「ねね、そろそろ朝ごはんを食べようよ! 僕、オニキスの料理が食べたいっ」

 屈託のない笑みでスカートの裾をつかむユアンはまさに無邪気そのもの。あまりの明るさに悩んでいるのが馬鹿らしくなったオニキスは頭を左右に振ると、お腹を空かせた王子様へ微笑みかける。

「ご自分で作ったらいかがですか? お上手なのですから」

「大好きな人のごはんは特別なの! 毎日楽しみにしてるんだからね?」

 邪《よこしま》な心のない、まっすぐな言葉に悩める従者は恥ずかしそうに顔を逸らす。理知的な顔に恥ずかしさと嬉しさの入り混じった表情を浮かべ、微笑む。オニキスもオニキスで、ずっとユアンと過ごせることができれば、と心から思っている。
 長年魔王専属のメイドとして魔界に仕え、世界を見守ってきたオニキス。先代と亡くなった妃の逢引《あいびき》は遠目で見ていて微笑ましいものを感じ、ふたりの愛情から生まれた子供を特別に見てしまっていた。また、この小さな王子が自分に抱いている感情も理解している。
 だが、魔王の息子うんぬんを抜きにしてユアンには成長してもらわなければいけない。主人を想う従者は胸の内にある決意を固め、表情を引き締めた。

***

「そ、それ……どういうこと?」

 琥珀色のパンを片手に、オニキスとテーブルを挟むユアンは声を震わせた。

「ですから、もし魔王がほかの方になってしまうと……私はここを去らなければいけないのです」

 突然告げられた言葉に絶句し、口を開いたまま固まるユアンの手からパンが落ちる。つい先ほどまで朝の幸せなひと時を送っていたが、愛する女性のひと言でその空間は氷のように凍《い》てついた。
 心が締めつけられ、全身の体温が急激に引き下がる。

「ど、どうして……さ?」

「私は魔王様のお世話係です。魔王でない人のお世話をしていてもなんの意味もありませんので、新しい魔王様に仕えるのです」

 それは、純粋な想いを利用したオニキスの策。相手の恋心を逆手に取り、魔王相続という行事に関心を持たせるための嘘。眼鏡を上げ、テーブルに両ひじをつく。
 その顔つきに庭にいた時の面影はなく、まるで機械のように冷たく、感情のひとつも見えなかった。
 愛する従者の言葉、鉄面皮《てつめんぴ》からユアンもこの話が本当であると信じ込んだようだ。子供のような心で、人を疑うことを知らないからこそ嘘には簡単に引っかかる。両目の端に涙をため、今にも泣きそうになるユアン。オニキスはその様子をただただ黙って眺めていた。
 先代がさぼっていた、我が子を突き放す育て方。どういうわけか今、血の繋がっていない従者がそれをしてしまっている。

「やだよ……そんな、オニキスと別れるなんて、嫌だ!」

 テーブルを殴りつけ、駄々をこねるように言葉を放つ。ないものをねだる子供のような瞳でジッとオニキスを見つめた。

「では、がんばって魔王になってください。手段なんていくらでもあります。一度、自分でお調べになってはいかがでしょう?」

 そんな主人を冷淡な目で見つめ返し、さらに突き放す。話は終わりだ、といわんばかりに椅子から立ち上がり、テーブルに背を向ける。

「う……うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 甘やかされて育った魔王の息子はついに泣き出してしまう。乱雑に立ち上がると椅子を倒し、食堂から走り去ってしまった。

「……少し、言い過ぎましたか、ね? しかし、これもユアン様の成長のため。そう、なのですが……胸が痛みます」

 そして、オニキスは再びため息をつく。自身の顔をペタペタと触り、悲しみに打ち震えていたユアンを思い出しては、それほどまでに恐ろしい顔になっていたのかと自分自身に打ち震えた。
 先代魔王が亡くなってからというもの、気苦労が絶えない。
 そのほとんどがユアン絡みであると思えば、気がつくと顔に笑顔が戻っていた。本来、魔王の世話といえば料理や洗濯はもとより、戦いの事後処理だったり武器の手入れだったりすることがほとんどである。
 だが、今回に限っては違っていた。子供の面倒見という、本来メイドには不必要な仕事。彼女は初めて経験する出来事に不安と気だるさを感じていたが、まっすぐに自分へ向かってくるユアンを気に入ってもいた。

「もし。あの子が魔王になったら、私は……」

 窓の前に立ち、自身の顔を眺めては昔ならば決してしなかった妄想に取りつかれる。彼ならば、必ず立派な魔王になってくれる。
 そうすれば、いずれ……と、そのような期待を抱いて、主人が開けっ放しにした扉を見つめた。
 

第1巻大増量お試し読み公開第2回は9月22日18時公開!

●【連載小説第2回】『 ハーレム! ちっちゃな魔王の淫らな後宮(1)』

ハーレム! ちっちゃな魔王の淫らな後宮(1) (オシリス文庫)

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ハーレム! ちっちゃな魔王の淫らな後宮(2) (オシリス文庫)

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著者:紫
イラスト:月猫
レーベル:オシリス文庫


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