人気漫画家の連載コラム! 「全身貞操帯」「触手エステ」──アダルトライトノベル「オシリス文庫」の個性的なプレイやテーマをカレー沢薫先生が切れ味するどく語ってくれます! あなたの知らなかった性癖が花開いちゃうかも!?
(注:コラム内でオシリス文庫の刺激的な挿絵が登場することがあります。周囲にはお気をつけください)
サキュバスはお好きだろうか?
サキュバスといえば「国語算数理科サキュバス」と言われるとおり義務教育レベルの知識なので知らない人はいないとは思うが、ちょうどさっきトラックに轢かれて記憶を失ってしまった、という人のために一応説明しておこう。
ネット情報によると、サキュバスとは起源は不明だが、何百年以上も前から民間伝承に登場する悪魔の一種である。
悪霊とか精霊とかそこは諸説あるが、共通しているのが「人間の男とセクロスする」という点である。
夢の中でセクロスするとか、肉体を持って実際セクロスするとか、セクロスの仕方についてはまた諸説あるが、とにかくメチャクチャセックスしてくるところだけは同じである。
そしてサキュバスはだいたい「ドスケベお姉ちゃん」の姿をしてやってくる。
なんという都合のいいド淫乱悪魔だろうか。
昔の人が我々のように発泡酒を飲みながら「乳とケツを放り出してるエロ女悪魔が窓から入ってこねえかな、相手が悪魔ならこっちも抵抗できないし、姦淫もいたし方なしっすわ」と、教典の空いたページに「俺の考えた最強のスケベ悪魔」を描いたことからサキュバスが生まれた、かどうかはわからない。
宗教的に真剣に考えられたのかもしれないが、都合がよすぎる存在には変わりない。
昔の人がせっかく考えてくれたすきのないエロ設定を使わないなんてご先祖様に申し訳が立たなすぎる。
そんなわけで現代でも「サキュバス」が登場する創作はたくさんあり、BLにすら出てくるくらいだ。もうわけがわからない(編集部注:男淫魔のインキュバスではなくサキュバスが出てくるBLが本当にあるそうです)。
サキュバスが登場しているのは、漫画や小説、アニメやゲームだけではない。
すでに「バーチャルYouTuber(Vtuber)」界にも活躍の場を広げている。
「Vtuber」とは、YouTuberをやっているという設定の二次元キャラクターのことである。
今回ご紹介するのは動画配信者として活躍するバーチャルサキュバスの「夢魔ぺろり」さんである。
ぺろりさんは2019年6月から活動を始めたバーチャルYouTuberである。
サキュバスらしいわがままボディだが、顔立ちはかわいらしく、喋り方もおっとりしている。かなりの清楚系サキュバスであり、雑談やゲーム実況に加え「ASMR動画」を得意としている。
「ASMR」とは、もともと聴覚への刺激で与えられる快感のことを指す。
みなさまもYouTubeで、せんたくのりなどで作られた、女騎士を凌辱しない方のリアルスライムが、引きちぎられたり、切り刻まれたりする虐殺動画を一度は見たことがあるのではないだろうか。
あれはそういうリョナ動画ではなく、スライムが発する音でヌいてくれという趣旨のコンテンツだ。
ヌくかどうかは個々人によるが、とにかく「音」を楽しむ動画である。
実際ぺろりさんのチャンネルをのぞきにいってみたところ、配信している「AMSR」で特に特徴的なのは心臓の男を聞かせる「心音」そして、腹の音を聞かせる「疑似胎教」であった。これらにバブみを感じているリスナーもいるようである。
リラックス系が多いAMSR界においてペロリさんはあえて圧迫感のある攻めた音で勝負しているという、ここらへんはやはりサキュバスと言えよう。
そんな夢魔ぺろりさんが我らがオシリス文庫とコラボをすることになった。
Vtuberがアダルトライトノベルとコラボ! というと、アニメや漫画のキャラがドスケベ同人誌にされたかのように聞こえるが、ぺろりさんはもともとエロが本分のサキュバスである。
むしろ、ツイッターでバズったアマチュア漫画が商業作品になったぐらいの躍進である(編集部注:なお、夢魔ぺろりさんは公式にご自身の薄い本を募集されています)。
しかしぺろりさんは今後も、過剰なエロネタはすぐ垢バンされかねないYouTubeで活躍していかなければいけない身なので、オシリス文庫とのコラボ作品もR18要素は抑えめになっている。
そんな『耳の奥から癒しちゃう♪ Vtuber夢魔ぺろりの耳かき、耳舐めダイアリー』は、仕事や勉強に疲れた主人公のところにぺろりさんがやってきて、マッサージや耳かき、耳舐め、さらには歯みがきなどで癒してくれるオムニバス作品となっている。
配信されている「AMSR」動画と合わせればより直接癒してもらっている気分になれるだろう。ぺろりさんの夢男子は買いだ。
ちなみに、女性主人公のお話もあるので、夢女子や、女子たちがキャッキャウフフと歯みがきしているところを見てえという百合萌え壁のシミ派の人にもおすすめできる。
小説だけでなく、さまざまなイラストレーターさんがビキニやセクシー白衣姿など、いつもとは違うぺろりさんの姿を描いてくれているのでファンは必見の書物だ。
しかし、それはそれで楽しみであるが、正直「セクロスできるサキュバスも見たい」と言う人も多いだろう。
何世紀も前からサキュバスはセクロスしている、むしろセクロスしかしてないのに令和にもなってしていないなんておかしい、ここは縄文時代かと思われたかもしれない。
安心してほしい、ちゃんとセクロスできるサキュバスもご用意してある、ここは縄文ではない、オシリス文庫だ。
『サキュバス姉妹と過ごす、異世界まったり性活』という作品があり、ぺろりさんのノベライズ担当の秋之瀬真都さんが執筆している。どうやらサキュバスものには定評がある作家さんのようだ(編集部注:サキュバスつながりがご依頼のきっかけでした)。
異世界転移した主人公が田舎暮らしをしながらサキュバス姉妹とドスケベ三昧(ざんまい)という、エロスローライフ小説である。
姉妹はいうまでもないが巨乳と貧乳、ひと口で二度おいしい仕様になっている。
しかも登場するサキュバスはサキュバスなのに処女という設定だ。
先人が考えた「ド淫乱女悪魔」に「でも処女がいい」というさらなるでかい夢をぶち込んだ逸品である。
現代人もパイセン方のあとを追っているだけではないということだ。
夢魔ぺろりさんも『サキュバス姉妹と過ごす、異世界まったり性活』もサキュバスを扱いながら「清楚系」や「処女」という相反する要素と共存させているところは共通している。
「突然ドスケベ女悪魔(処女)が襲ってこないかな」という間違ってもリアル社会では言えない願望を実現させたい人は両方買いと言えよう。
ちなみに、あるエロマンガ読み放題サービスが実施した都道府県別エロマンガ人気ジャンル統計によると福井県では「サキュバス」が一番人気だったそうだ(編集部注:Komiflo集計)。
少なくとも検索窓に「サキュバス」といれたことがある福井県民は全員買い、ということである。
カレー沢薫
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
耳の奥から癒しちゃう♪ Vtuber夢魔ぺろりの耳かき、耳舐めダイアリー
著者:秋之瀬真都/原作:夢魔ぺろり/イラスト:れつな 他
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