【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第13回「官能小説古書店」──『路地裏古書店 淫乱堂』

【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第13回「官能小説古書店」──『路地裏古書店 淫乱堂』

2020/11/06 17:00
【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第13回「官能小説古書店」──『路地裏古書店 淫乱堂』


人気漫画家の連載コラム! 「全身貞操帯」「触手エステ」──アダルトライトノベル「オシリス文庫」の個性的なプレイやテーマをカレー沢薫先生が切れ味するどく語ってくれます! あなたの知らなかった性癖が花開いちゃうかも!?



(注:コラム内でオシリス文庫の刺激的な挿絵が登場することがあります。周囲にはお気をつけください)

「官能小説」を読んだことがあるだろうか。
ないとしたらなぜこのエロライトノベルのサイトにいるのか、道に迷うにしても迷い方というものがあるだろう

官能小説とは、ネット事典よると「官能に訴える、つまり男女間もしくは同性間での交流と性交を主題とした小説の一ジャンル」のことである。
つまり、オシリス文庫作品もライトノベルながら広義では官能小説にあたる。

しかし「官能小説」と言われてまず思い浮かぶのは、黒い背表紙に「人妻」「未亡人」「美少女」という、小学生にとっての「カレー」「ハンバーグ」「オムライス」に相当する垂涎ワードを惜しげもなく並べ、表紙にはやたらリアルタッチの美女が描かれている文庫本ではないかと思う。

それらの官能小説は駅のキヨスクに高確率で置かれている、だがキヨスクに置かれているということは、乗り物の中で読むことを想定されているのであろうか。

車内で官能小説を読んで興奮状態になっていったいどうしようというのか、衆目の中で「座席に座っているのにたっているモノなーんだ」というなぞなぞ状態になってしまったら鉄道警察出動の恐れもなくはない。

それとも「儂(わし)レベルになると、東京大阪間程度の官能小説鑑賞ではピクリともせんよ」という、中高年男性の度胸試しのために置かれているのだろうか。

キヨスクに置かれている官能小説の謎はいまだに解けていないのだが、昔から気になる存在だったのは確かである。

そして20歳を過ぎたころ、いったいあの手の本にどれだけエロいことが書いてあるのか一度確かめてやろうと思い、今はなき近所の本屋へ車を走らせた。

書店の官能小説コーナーというのはやたら種類が豊富であり、どれを選ぶべきか迷ったが、宗教上の理由で凌辱系は読まないため、できるだけ和姦そうなものを選んだ。
しかし、官能小説だけレジに持っていくというのは勇気がいる、よってカモフラージュとして一般誌も一緒に購入するのがエロ本を買う時の作法である。
店員はそんなこと気にしてないと思うかもしれないが、これは己(おのれ)の心のためにする「儀式」なのだ、邪魔すると呪われるので口を出すべきではない。

その時私が選んだブラフ本はなにを思ったのか「ゴスロリファッションブック」であった。
今思うとエロを隠すというより、官能小説を買うという恥に、別方向の恥をぶつけただけに過ぎないような気がするが、それで相殺されたと信じている。

儀式を無事終え入手した官能小説だが、童貞男子である主人公がふたりのお姉さんキャラとエロいことをするという、スタンダードな内容である。
しかし、使用済みのパンストやパンツの匂いを嗅いだり、顔面騎乗をしてもらったりと、フェティシズムな内容が延々続き、いっこうにセクロスしないのだ。

そして最終的に、片方のお姉さんに「アナルセクロス」をし、もうひとりのお姉さんに「俺!この手術が終わったらお姉さんとセクロスするよ!」と宣言して終了、という打ち切り漫画のような終わり方をしてしまった。
興味ないとは思うが、主人公は難病設定であり、牛乳瓶大の巨根の持ち主なのだが、最後の最後でそれよりもはるかに巨大な死亡フラグを立ててくれた。

つまり「俺の知っているセクロス」が1回も行なわれないまま終わったのだ。
あれだけ、子どもの頃から「とんでもなくエロいに違いない」と思っていた本に1回もセクロスがないという事実にショックを受け、それ以来あの手の官能小説には手を出していないので、ほかの古典的な官能小説がどうなのかはいまだに知らない。

今回紹介する作品は、そんな「官能小説」が重要なテーマになっている。

『路地裏古書店 淫乱堂』
これが今回紹介する作品である。


タイトルからして古書店が舞台なのはわかるが、店名が攻めすぎている、よくその屋号をお上(かみ)に提出する気になったな、と思うが、これは俗称であり本当の店の名前は「印覧堂」である。
しかし、読み方の時点で気づけよとも思う、娘に幸運な子に育つようにと「運子」と名づけるようなものだろう。
しかしこの「印覧堂」という店名は確信犯的なもので、表向きは普通の古書店だが、奥には膨大な量の官能小説が置かれているという、知る人ぞ知る隠れた名店なのである。

主人公の「芦名水道(あしなすいどう)」は大学を辞めバイト三昧の日々を送っていたが、「印覧堂」の店主だった祖父が70を過ぎてアメリカに留学するという破天荒な理由で、突然新店主に任命されるところから話は始まる。

当初は印覧堂がドスケベブックで有名ということすら知らなかった水道だが、徐々に古書店経営にも慣れていく。
そんなある日、メガネにツインテールの真面目そうな女子が官能コーナーに入っていくのを見かけ、間違って入ったのかと追いかけると、メガネっ娘は官能小説の物色に夢中であり、さらに「今夜のオカズはこれでキメ!」と、惣菜の素のCMのようなクソでか独り言を繰り返し、もはや立ったままGを始めてもおかしくない状態であった。
ちなみにGとは一般的には「ゴリラ」を指すが、ここではもちろん「自慰」である。

メガネっ娘の名前は「弓張(ゆみはり)みどり」という女子大生で、恋愛経験のない処女だが、官能小説好きでリアルエロにも興味津々という真面目系ドジっ娘淫乱である。

みどりはいろいろ(主に性的に)あって印覧堂でバイトをすることになり、さらに印覧堂の常連で一見ギャルだが実は「慢汁満子(まんじるみつこ)」という最高のペンネームで官能小説を書いている女子大生「椎名嶺嘉(しいなれいか)」、さらに水道に昔から思いを寄せるツンデレの義妹「小巻(こまき)」を交えた、ハーレムものになっていく。



ただ、本作では、舞台が古書店で、ヒロインが官能小説好きや官能小説家というだけではなく、その設定を生かし、エロシーンになるとヒロインたちが、官能小説調に喘ぎだす、という特徴がある。

官能小説といえば陰茎のことを「肉棒」と呼ぶなど、独特の表現が特徴だが、あれは卑猥さを演出するのと同時に、Y本の取り締まりを逃れるための知恵だったそうだ。

本書でヒロインから繰り出されるセリフは官能小説というよりは、それよりIQを5ケタぐらい下げた「淫語系」に近い。

淫語系とは、登場人物がことの最中に、とにかく卑猥な言葉を連呼したり状況を実況したり、人間の声帯からは出ないはずの音、さらには「♡」という「記号」まで大量に吐き出すという肺活量激強ジャンルのことである。

彼女たちは肉棒などとぼかしたりせず「取り締まり上等」という姿勢で「おち○ちん」など直接的なワードを連呼しまくるのだが、よく読んでみると知能指数マイナス5億に見えて、ボキャブラリーは非常に豊富でありたまに「着床」など保健体育の時間にしかお目にかかったことがない単語が出てきたりする。
そう考えると、ただひたすら卑猥な言葉や変な声、ハートマークを並べているだけのように見えて、全て計算し尽くされているように思えてくるし、最終的にこれはもはやラップに通じる「音楽」であり、芸術だな、という結論に達してくる。
淫語系は恥ずかしくて読めないという人も多いかもしれないが、慣れてくる楽しくなってくるので臆せず読んでほしい。
しかし淫語系に慣れ過ぎると、普通の喘ぎ声ではもの足りなくなってくるという諸刃の剣なので摂取し過ぎには注意である。

だが「つまり淫語ヒロインたちとセクロス三昧なわけね、完全に把握した」と思ったかもしれないが、実はそうではない。
確かにパイズリに始まり、フェラや69(シックスナイン)、G鑑賞などエロ三昧ヌキ放題なのだが、なんと3巻時点でどのヒロインとも挿入に至っていないのだ。

昔「官能小説」を読んだ時の「俺の知っているセクロスがない」という悪夢がよみがえる。
それとも「挿入はしない」というのが「官能小説」の作法なのだろうか、今後の展開に注目である。


カレー沢薫

漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。


路地裏古書店 淫乱堂(1)
著者:えみの/イラスト:sekiyu。

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