人気漫画家の連載コラム! 「全身貞操帯」「触手エステ」──アダルトライトノベル「オシリス文庫」の個性的なプレイやテーマをカレー沢薫先生が切れ味するどく語ってくれます! あなたの知らなかった性癖が花開いちゃうかも!?
(注:コラム内でオシリス文庫の刺激的な挿絵が登場することがあります。周囲にはお気をつけください)
いまだに新型コロナウィルス終息の兆しが見えない現在、政府からも不要不急の外出をするな、大人数で集まるな、と口をサワーにして言われ続けている。
ほかにも「コロナ期の新生活様式」はさまざまに提示されている。
しかし「性生活様式」に関しては、依然として国はだんまりだ。
「我が村では公民館で村長(87)により「コロナ禍におけるへっぺガイドライン」がいち早く発表された」というところがあったら申し訳ないが、セックスに関して大きく周知されていないのは確かだ。
コロナ対策記者会見とかで「セックスについて大臣はどうお考えですか?」などと質問したらおそらく「この非常時になにを言っているのか」と遺憾の意を示されてしまうだろう。
しかし、国民としては日本のそういうところが遺憾である。
セックスが外すことのできない人間の生活の一部でないというなら、どうやって少子化を解決するつもりなのか、少子化対策会議とは人間を細胞分裂させる方法について話し合う場なのか。
誰しも一回は「不要不急の外出、大人数での会合、乱交パーティは控えましょう」と冗談で言ったことがあると思うが、正直「乱交パーティするんじゃねえ」とはっきり言える国は偉い。
言われてはじめて「乱交パーティはダメなんだ」と気づける奴だっているのだ。
そんなお下品なこと言えませんわ、という国ほど乱パでクラスターを発生させるのである。
「緊急事態なんだからセックスは控えましょう」ではなく「緊急事態だからこそあえてセックス」くらいの気概で「やらない」で片づけず「いかに安全にやるか」を考えるべきではないだろうか。
実際、セックスに関して指針を出している先進的な国もある。
某国では「コロナ禍におけるセックスは1.5メートル離れて行ないましょう」というガイドラインが大真面目に発表されている。
「とんちを試されている」としか思えない要請だが、具体的には1.5メートル離れて「ソロセックス」をする、簡単に言えば「オナニーの見せ合い」を推奨しているのだ、あいだにアクリル板を挟むなどすれば、なおよい。
接触型セックスをするにしても、マスクやフェイスガードを着用し、むやみに相手の体を舐めまわさないこと、当然ふたり以上ではしないことなどを要請している。
そして、いちばん推奨されている性行為はもちろん「ソロオナニー」だ。
そんなわけで、コロナによって国にまで推奨されるようになった「オナニー」だが、オシリス文庫も今いちばんクールな性行為をアシストしてくれる作品を多数取り揃えている。
しかし、内容はダブルスのセックス、時には団体戦を扱ったものが多い。
だが「オナニー」をテーマにした作品もあるのだ。
『月をも砕くオナホール-史上最大のテクノブレイク-』
「オナニー」というミニマムなテーマに対してタイトルのスケールがデカすぎる。
ちなみに「テクノブレイク」とは必殺技名ではなく、主に「オナニーで死ぬ」ことを指す、つまり「ソロ腹上死」だ。
本作はフリーターの主人公「田中幸平」が、やっとの思いで貯めた「11万円」を握りしめ伝説のオナホール「ZINGA」を入手するためアダルトショップへ行くところから始まる。
某有名オナホ会社に怒られるのではないか、と思うかもしれないが、安心してほしい。
あの会社はオナホの締めつけはキツイがパロディに関してはガバマンというわけではなく、『月をも砕くオナホール-史上最大のテクノブレイク-』はTENGA10周年を記念したコラボ版も配信した作品なのである。
2015年の発売当時「TENGA」が実名で活躍する特典ショーストーリーを収録した【TENGA 10th Anniversary Limited Edition】を期間限定で配信したらしい。
(編集部注:「TENGA(てんが)」は株式会社TENGAの登録商標です。また『月をも砕くオナホール-史上最大のテクノブレイク-【TENGA 10th Anniversary Limited Edition】』は2015年12月31日までの期間限定配信書籍です。2021年2月現在は配信されておりませんのでご了承ください)
TENGAさんには私も別件で少しお世話になったことがあるが、手書きのお手紙つきで豪華TENGAセットを送ってきてくれた誠実な会社である。
私にTENGAを使いこなす男根が生えていないことがいまだに悔やまれてならない。
コラボ版も配信していただけに、作中におけるTENGAもとい「ZINGA」の解説にも「女神の愛撫を凌駕し、神をもテクノブレイクさせる」と気合が入っている。
半年にもわたる節約、そして購入時の「そういう時に限って店内にいる美女」などのトラップをくぐりヌケ、ZINGAを手に入れた幸平はさっそくAVをオカズにZINGAを堪能し始める。
ここでも「温かな水に包まれるような優しい感触! にも関わらずなんだこの圧倒的密着感は!」という、いったい誰に向かって説明しているのかわからない広報セリフが光っている。
そして絶頂の瞬間、ZINGAの先端から閃光が放たれ、その光線はテレビとアパートの壁を消し飛ばし、岩山を突き抜け、月に直撃、月面に深いクレーターを刻み込んだのであった。
……であった、ではないがそうなってしまったのだがら仕方がない、ちなみにTENGAとZINGAの直接的因果はないので、月のことは心配せずに購入してほしい。
ここで前述の「そういう時に限って店内にいる美女」が幸平の穴の開いたアパートに現われる、一応前フリだったのだ。
彼女の名は「ミリヴィア・ノーリッシュ」。年齢は20歳前後、日本人とイギリス人のハーフの銀髪メガネ美女である。
ミリヴィアの説明によると、幸平が購入したのはZINGAではなく、ミリヴィアの亡き父が開発した兵器で、その強力さから悪の組織に目をつけられ、破壊しようにも間に合わず、日本へ亡命し、とりあえず似たようなものが並ぶアダルトショップに兵器を隠したところ、それを幸平が間違って購入してしまった、ということである。
なぜそんな兵器の内部がカズノコ天井とミミズ千匹を模していたのか、そして男根にジャストフィットしたのかなど疑問はつきないが「ツッコむのはオナホだけにしといてくれ」ということなのかもしれない。
とりあえず兵器をミリヴィアに返そうとするが、節約だけではなく半年間「オナ禁」をしていたため、兵器の中で半勃ち状態で「抜けない」という事態が勃発する。
兵器を抜くためにはまず男根を性的な意味で抜いて萎えさせなければいけない。
ここで、お待ちかねの「ミリヴィアのお手伝いタイム」である。
ミリヴィアは幸平が抜くための生オカズとなり、ストリップ、ストッキング破き、ソロセックス披露などをしていく。
ミリヴィアの尽力もあり、無事イくことができるのだが、当然また光線が発射され、それが兵器を狙う悪者に直撃、そのまま地球を半周し、太平洋の向こうにある某女神像の顔に激突、という国際的に危うい「顔射」描写がされている。
無事、兵器を取り外すことができた幸平だが、それでは終わらず、お手伝いをして火照ったミリヴィアとのダブルスが行なわれる。
なんだ結局セックスかよと思うかもしれないが、このセックスは、今までの怒涛のオナホ描写に比べるとかなりあっさりしているので、やはりこの作品の主題は「オナニー」そして「オナホ」である。
いわゆる頭を使わずに楽しめるバカエロ小説だが、奇しくも「オナニー」が国が推奨する行為になっている今である。あえてセックスよりオナニーに主眼をおいた本作品を鑑賞してみてはどうだろうか。
カレー沢薫
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
月をも砕くオナホール-史上最大のテクノブレイク-
著者:かっぷ/イラスト:fu-ta
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