【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第29回「透明人間転生」──『転移したのに透明人間』

【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第29回「透明人間転生」──『転移したのに透明人間』

2021/07/02 17:00
【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第29回「透明人間転生」──『転移したのに透明人間』


人気漫画家の連載コラム! 「全身貞操帯」「触手エステ」──アダルトライトノベル「オシリス文庫」の個性的なプレイやテーマをカレー沢薫先生が切れ味するどく語ってくれます! あなたの知らなかった性癖が花開いちゃうかも!?



(注:コラム内でオシリス文庫の刺激的な挿絵が登場することがあります。周囲にはお気をつけください)

誰しも子どものころに一度は「透明人間」になってみたいと思ったことがあるのではないだろうか。
しかし、大人になってもなりたいと思っているのは、相当に無邪気な人か、全国指名手配されている人以外あまりいないと思う。

確かに自分の意志で透明になれたり戻れたりするなら、今からでも欲しいチートスキルだが「ずっと透明人間」というのはどう考えても困る。

昔少年漫画雑誌の恐怖系漫画で、透明人間になって悪行の限りを尽くすが、車に轢かれてしまい、周囲に助けを求めるも、当然姿は見えないので放置され、そのまま死ぬというものがあったが、これが全てを物語っている。

つまり「きもーい、透明人間に憧れていいのは小学生までよね、キャハハハ」とメスガキふたりに大爆笑されてもおかしくない発想ということだ。

透明人間になって大金を得たとしても、店員と対面で買い物することは不可能だし、商品を直接盗もうにも品物まで透明になるわけではないだろうから、50インチテレビがひとりでに店の外に出ようとしていたらさすがに異変に気づいて止められると思う。
そもそも、大金や貴重品が裸で置いてあるとは考えづらい、それを保管してある金庫などを開けるスキルがなければ、大金が入っていると思しき金庫を部屋に飾ることしかできない。

今はネットがあるので、盗んだ金を自分の口座に入れて通販、という手もあるが、それでも対面で商品を受けとることができないし、代引きも不可だ。
つまり、パクった金を己の口座に入金しソシャゲのガチャに使うというのが透明人間になった際の最適解である。
こう考えると、透明人間になるのも悪くないと思えるから不思議だ。

しかし、透明人間になってなにをするかと問われたら、第一に考えるのは金よりも「エロ」だろう。
「透明人間になって銭湯や更衣室に侵入する妄想をしたことがない者のみが、この罪人に石を投げなさい」という有名な言葉もある。
しかしのぞき程度ならやり放題と思うが、さすがに透明人間になったからといって「気づかれずに挿入」は無理だろう。
それこそ文字どおりイチモツが肉眼で見えないほど小さくなければ難しい。

物理的に存在する以上相手も襲われれば気づくだろうし、抵抗もするだろう。
刃物でも振り回されてヒットしたら、もちろん救急車も呼ばれずに終わりである。
一番不幸なのは、襲われたうえに部屋に透明な死体が放置されてしまう被害者にほかならないが、透明人間になったほうもどちらかといえば幸運ではなく不幸ですらある。

しかし、なってしまったものはしょうがない、なったらなったでそれなりに楽しんでいくしかないだろう、もちろんエロい方向に。

そんなわけで今回紹介するのは透明人間になってしまった男の話である。
ちなみに言うまでもないが異世界転移ものである。
もはや「なにも言わなかったら異世界転生か転移もの」ぐらいの認識でいてほしい。

『転移したのに透明人間』

これが今回紹介する作品だ。


タイトルどおり転移したけど透明人間だった件、な話だが、転移するまでの経緯がちょっと変わっている。

まず異世界転生した人100人に「異世界にきたきっかけは?」と聞いたら過半数が「トラックに轢かれた」と答えるだろう。
現に私が今まで読んだ作品も、トラック轢かれ率がかなり高い。
しかしこれはマンネリではなく「様式美」であり、トラックが突っ込んできたら「またかよ」ではなく「よっ、待ってました!」と声かけするのが正しいラノベファン仕草である。

だがこの物語の主人公「三木田一雄(みきたかずお)」の転移理由は「自殺」である。
ラノベ主人公と言えば「俺はそんなつもりじゃないのに、周りが勝手に話を進めて、気づいたら女はパンツを脱いでるんですよ、やれやれ」という受け身な人間が多い中、ずいぶん主体性のある主人公である。

しかし、自殺理由は、強烈ないじめや借金に苦しんでいるなど明確なものではなく、逆に「なにもないのが苦で自殺」なのである。

具体的には、子どものころクラスメートと一緒にスカートめくりできなかった、中学のころ好きな子と同じ部活に入るなどストーカーじみててできないから、代わりに野球部に入りいじめられる、高校のころカワイくないけどこっちに気がありそうな巨乳の女に告れなかった、もちろん本命の好きな子にも告れなかったなど、主に「女になにもできなかった」ことが自殺原因である。

そんなことで自殺など、一日三桁消費者金融に鬼電されながら生きている人などに対して失礼な気もするが、なにが苦しいかは人それぞれである。

そんなわけで一雄は生涯童貞で乳のひとつも揉めずに死ぬことを後悔しつつもマンションの15階から飛び降りる。

童貞を捨てることがマンション15階から飛び降りることより難易度が高いとはあまり思えないのだが、おそらく15階からダイブすることはできてもソープの扉をノックすることはできないのだろう、ならば仕方がない。

そんな理由で死んだ奴のミートを片づける人がかわいそうすぎる、と神が判断したのか一雄の体は地面とキッスすることなく異世界へと転移する。

異世界に転移した一雄はそれに動揺するわけでもなく、話しかけてきた「妖精」を羽虫扱いし、妖精の抗議に対しても「虫の話を聞く習慣がなくてね、失礼」などと皮肉をブチかましたりする。

なぜこんな胆力を持った男がたかが人間の女に攻勢に出られなかったのか不思議でならないが、おそらく「逆・女特攻」のスキルでも持っていたのだろう。

このようにある意味今までで最も虚無的な主人公なのだが、一雄は異世界へきたことを転機ととらえ「変われるかもしれない」という希望をいだく。

しかしその転機は「※ただしこの世界の人間には自分の姿が見えません」という注釈つきであった。

異世界で透明人間になってしまった一雄はとりあえず食料を万引きしたあと「とりあえずエロいことでもするか」と100人中120人が思いつく発想で、どこかの屋敷で居眠り中のメイドに狼藉しつつ自慰に耽り顔面にぶっかけて去る。

「まるで成長していない」と読者を某バスケ監督の顔にさせる一雄だが、ここで本当の転機が訪れる。

偶然見かけたやんごとない身分と思われる女子が、高校時代に告れなかったクラスメートに酷似していたのだ。
その女子は、転移してきた国の第二王女「クラリス」といい、一雄は思わずあとを追い、城に忍び込む。

転移前はストーカーに思われそうという理由で好きな女の子と同じ部活にすら入れなかった一雄が堂々と本物のストーカー行為をしている時点でかなり「成長」の片鱗が見えているが本当の成長はこれからだ。

一雄が城に忍び込んだのは、メイドに悪戯したのと同様に寝ているクラリスへの痴漢目的である。
しかし、前述のとおり、いくら透明でも痴漢されればそりゃいつかは気づくよ、ということでクラリスは途中で目を覚ますが、姿は見えねど声は聞こえる一雄のことを自分の願いを叶えにきた「妖精」という勘違いをする。

クラリスの説明によると、この国の王は現在病に伏せっており、後継者として正妃との娘で第一王女「ヤムネ」が選ばれるはずだが、王と女性使用人のあいだに生まれた、言うなれば妾(めかけ)の子で第二王女であるクラリスが王に可愛がられていることを警戒し、ヤムネはクラリスをいじめ、根も葉もない噂をながし、クラリスを追放しようとしている。
クラリスは自分が女王になる気などないが、病床に伏せる父を置いて城を出ることはできないし、もちろん姉を追いだすなどということもしたくないという。

とにかく誰も傷つけたくないというクラリスに心を打たれた一雄は「妖精」として城内で暗躍し、クラリスを女王にすることで丸くおさめることを提案する。

ここからの一雄は本当にクラリスのために真面目に動く。

ただその方法が、ヤムネに忠誠を誓う生真面目でボーイッシュな親衛隊長「ローズ」の前に「性愛の妖精」という雑すぎる設定で出現、性的に篭絡し城内にクラリス派を増やすというものだったりするのだが、クラリスのためにやっていることなので仕方がない。


現に一雄はこのローズであれだけ悔いていた童貞を捨てたはずなのだが、その感慨についてはほぼ書かれていない。
一途なのはとてもよいことなのだが、もっとこう、手心を、という感じである。
そして続いて、城内で大きな影響力を持つ女魔術師「イジェルタ」の攻略にかかるが、ローズとは違いイジェルタの方が一雄より一枚上手。
逆に体を弄ばれてしまう、という「攻められたい派」も歓喜な展開になっていく。



ちなみにクラリスも、願いを叶えてやろうと言う一雄に「私もできることはなんでもします」という、エロ業界のヒロインが迂闊に言ってしまいがちな言葉第1位を言ってしまう。

これを言っちまったからには、処女を奪われるのはもちろん、股間を収納あつかいされ、ありとあらゆるものを入れられても文句は言えねえというのがアダルト村の掟だが、絶好の言質(げんち)をとったにも関わらず、裸にして手コキというこの世界においては「ほっぺにキス」程度のことしかさせず、本番は全てが解決し、両想いになるまでしないのだ。

このように「透明人間になって痴漢三昧」かと思いきや、この物語は屈指の「純愛」もの、そしてわかりやすい主人公の成長物語と勧善懲悪ストーリーでありながら、クラリスの望みどおり、ほとんどの人間が幸せになるというハッピーエンドになっているので、ハピエン好きにはかなりおススメできる。
逆に「現世で女に相手にされずくすぶっていた卑劣漢が透明人間になったことで女に復讐!」みたいなのを期待された方は泡を吹いて死ぬと思うので、レーベルごとほかを当たることをおすすめする。

ちなみに一雄がずっと透明人間のままなのかどうかは自分の目で確かめてほしいと思うが、この物語では幸い「着ている服も透明」になる仕組みのようだ。
一雄が透明のままでもふたりは幸せに暮らすだろうが、さすがにパートナーがずっと全裸というのも落ち着かないだろう、そういった意味でも優しい話でよかった。


転移したのに透明人間(1) ~性交に導かれる王女様~
著者:藤崎悠貴/イラスト:御幸やや

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