【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第33回「オーククイーン」──『お前はまだオークを知らない。』

【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第33回「オーククイーン」──『お前はまだオークを知らない。』

2021/08/27 17:00
【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第33回「オーククイーン」──『お前はまだオークを知らない。』


人気漫画家の連載コラム! 「全身貞操帯」「触手エステ」──アダルトライトノベル「オシリス文庫」の個性的なプレイやテーマをカレー沢薫先生が切れ味するどく語ってくれます! あなたの知らなかった性癖が花開いちゃうかも!?



(注:コラム内でオシリス文庫の刺激的な挿絵が登場することがあります。周囲にはお気をつけください)

異世界転生モノはお腹いっぱい、そう言い続けて3年間くらい経過してしまったような気がするし、下火になるどころか今も数が増え続けている。

読む側からすれば「とりあえず異世界転生しとけばウケると思いやがって」かもしれないが、もはや転生なんて「しているのが当たり前」の時代である。
そのうち「このキャラは呼吸している」とイチイチ書かないように「転生している」という部分は省略して書かれるようになるかもしれない。

つまり、今から転生モノをはじめるというのは、手堅くはやりに乗っているように見えて、定年後退職金でラーメン激戦区に参戦ぐらいの蛮勇になりつつあると言っても過言ではない。

ならばあえてラーメン激戦区で蕎麦を出せばいいかというと、それは「珍妙な格好をしてはやりの服を着ている連中を小バカにするのがカッコいい」と思っていたあの頃の俺たちと同じ発想だ。

はやりに乗りつつもその中で新しいことをする、というのが賢いやり方である。

流行に乗るというのは決して安易な方法ではないが、ある種の「近道」であるのは確かなのだ。
はやっているということは、みんながそれを知っているため、ある程度「説明」をする手間と「納得」をさせる手間が省けるのだ。

現に今のラノベを知っている人なら、最初の一行目に「俺はトラックに轢かれて異世界に転生した」と書かれていてもなんの疑問も持たないし、むしろ一瞬で「把握」となるだろう。
しかし、異世界転生という概念が一般化してなければ「トラックに轢かれたら死ぬのでは?」と開始3秒で「なんかこの話、入り込めねえぞ」となってしまう。

今までにない設定や世界観の作品というのは、読者にそれを理解させるのに時間がかかってしまい、そのあいだに脱落者を出しすぎると「設定を説明し終わった時点で終了」という「本編なしの説明書」みたいな話になってしまう。
特に中年以上になると「新しいことを覚えるのが面倒」という理由であらゆることを断念するため、説明に尺を取り、面白くなるのに時間がかかりすぎる作品というのは高齢化社会に向いていない。

その点、異世界転生ものは「異世界転生とはなにか」という説明がいらず、1ページ目から「冴えないおっさんだった俺がトラックにはねられてカワイイおっさんに!?」と面白いところから始められる、という点が強い。
だが問題は便利ゆえにみんなが使っているメソッドの中でいかに目立つかである。

流行の中で目立つ方法として一番スタンダードなのが「逆張り」そして「意外性」だ。
昔の転生モノであれば「乙女ゲーのヒロイン」に転生していたものをあえて「悪役令嬢」の方に転生するという趣向はかなり新しかった。
しかし、今度はみんながこぞって悪役令嬢に転生しはじめたので、今ではヒロインや悪役令嬢ですらなく「モブ女」に転生する者も増えており、そのうち一周回って「乙女ゲーのヒロインに転生するなんて新しい」になりそうな気がする。

ともかく異世界転生モノが乱立する今、どれだけ意外性のあるものに転生するか、というのは非常に重要である。

そんなわけで今回は「オーク」に転生してしまった男の話だ。

『お前はまだオークを知らない。』


せっかく転生したのにオークかよ、と落胆した人も多いだろう。
確かに私も「来世に期待」とよく言うが「いつから来世はよくなると錯覚していた?」であり、むしろ今より悪くなる可能性の方が高い。
このように特に細かく説明しなくてもオークと言えば「知性のないブサイクな魔物」エロ界においては「ブタ型モブおじさん」とイメージしてもらえるのも異世界系のありがたいところである。

そしてすでに共通のイメージがある、ということはギャップも作りやすいのだ。
主人公の「タケル」は現オークだが、前世は人間であり、その記憶を残していた。
つまり、オークだが「知性と理性のあるオーク」なのである。

物語はタケルが暮らしていたオークの村を人間に焼かれ、3匹の子オークとともに逃亡するところからはじまる。

なにやらシリアスな始まり方だが、なんとシリアスなのはここだけであり、ここからはオークホームエロコメディがはじまる。

人間の手から逃れ、洞窟でひっそり暮らしていたタケルだが、ある日森で「リーサ」という女冒険者と遭遇する。
リーサもエロラノベを読み過ぎた我々と同じくオークといえば「女と見れば犯す性獣」と決めつけ、敵意むき出しで襲いかかってくるが、難なくタケルに気絶させられ、仲間の人間に来られても困る、ということでとりあえず住処(すみか)に連れていかれる。

オークに捕まったと気づいたリーサは「オークに捕まるとか、女として詰んだわ」という自暴自棄状態になって、聞いてもいないのに、パーティー内の好きだった男をあとからきた女に寝取られた、という吐露をはじめ「諦めるためにはオークに孕まされて、女として完全にオワコンになるしかない」と言い始める。

薄毛に悩んで生きるぐらいならスキンヘッドで暮らす、という実に潔いタイプだ。
しかしタケルは理性的なオークである、リーサを犯す気も孕ませる気も全くなかったのだが、リーサの態度が「私をエロ同人誌みたいに犯す気でしょ!」から「俺をエロ同人誌みたいに犯すまでここを動かん」という感じになってきてしまっていたため「しぶしぶ犯す」。

もはや「犯す」とはなにか、という哲学的な問題になり始めているが、理性的なだけではなく「オークなのに性にやたら消極的」というのもまた意外性だ。

ヤケクソから「強姦を強要」というどっちを逮捕したらいいか迷う行為をしたリーサだが、それが思いのほか「よかった」ため、寝取られた男のことなどすっかり忘れタケルに夢中になってしまう。

そしてエロ創作というのは、どれだけ「連続中出し孕ませックス!」など景気のいいキャッチがついていても便宜上そう簡単には妊娠しなかったりする。
だが、リーサは本当に一発ツモで妊娠し、タケルの連れ子オークをかわいがりながら我が子の誕生を待ちわびることになる。

理性的なオークという出オチで終わらない、意外性から意外性への八艘(はっそう)飛びだ。
だが、このまま人間の押しかけ嫁とヤレヤレ系オークのほのぼので終わるわけではない。

ある日、タケルとリーサはリーサの仲間兼リーサの元思い人を寝取った女冒険者「セレス」と再会する。

セレスは手負いの状態であり、放っておくのは危険な状態であった。
そこで「オークの体液には治癒効果がある」という都合のいい設定が出てくる。

「傷を治すために一発やろう」などと言ったら正気を疑われるだろうが、エロ創作ではわりとよく出てくる設定である。
そして、一応本命のヒロインがいながら、ほかの女ともちょいちょい関係するのもエロラノベではよくある話だ。

傷を治すためなら仕方がない、とタケルとセレスがことを構えるのかと思いきや、なんとまずリーサが口でタケルの精液を受け取り、それをセレスに口移しするという精子バケツリレー大会が開催される。

なぜリーサを挟む必要があるのかというとセレスが嫌がったのもあるが、リーサが「浮気絶許」女子だからでもある。
珍しいタイプのヒロインだと思ったが、よく考えたらこれが普通なような気もする、浮気に寛大なうえに、なぜか浮気相手の女とも仲よくなるヒロインの方がおかしいのだ。

その後も、セレスはタケルとふたりきりになったときに尻を突きだしてタケルを誘惑したりもするが、なにせ「性に消極的なオーク」なので「冷静になれよ」とセレスを諭し、セレスもそのひと言で「スン」と音がしそうなほど冷静になるという謎の一幕があったりする。

セレスのほかにも、元貴族の娘の双子「シエラ」と「ベス」、その従者「ニケ」など、登場する女性キャラの数はかなり多いのだが、タケルとは一切そういうことにならない。
だが、よく考えてみると「女性新キャラが出たらあいさつ代わりに主人公と関係を持つ」というエロラノベ常識の方が非常識なのだ。

その後、リーサがまた妊娠するなど、どんどん大所帯になっていったことにより、リーサは周辺の人間たちと交渉し「オークの国」を建設することを思いつき、自らは「オーククイーン」と名乗るようになる。



その思いつきにヤレヤレしながらつきあうタケル、そしてほかの女性キャラたちはタケルの連れ子オークたちといい感じになるなど、本当にテーマが「家族愛」に寄ってくる。
オークなのに、と思うが「オーク=凌辱」が常識になっている自分の方がおかしいのかもしれない。

オークの設定もそうだが、ほかにもさまざまな「エロラノベといったらこうだろ」という固定観念をぶち壊してくれる作品になっている。

一旦エロラノベ脳をリセットしたいという人はぜひ読んでみてほしい。


お前はまだオークを知らない。
著者:あらいん/イラスト:いぬしま

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