【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第34回「コンビニで拾った少女」──『クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間』

【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第34回「コンビニで拾った少女」──『クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間』

2021/09/10 17:00
【オシリス文庫】「カレー沢薫の淫モラルなラノベ体験」第34回「コンビニで拾った少女」──『クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間』


人気漫画家の連載コラム! 「全身貞操帯」「触手エステ」──アダルトライトノベル「オシリス文庫」の個性的なプレイやテーマをカレー沢薫先生が切れ味するどく語ってくれます! あなたの知らなかった性癖が花開いちゃうかも!?



(注:コラム内でオシリス文庫の刺激的な挿絵が登場することがあります。周囲にはお気をつけください)

昔は、創作物、特に漫画は「ストーリーを消化し終わっても人気がある限りは続ける」という、ガムを味どころか物理的に消滅するまで噛み続ける方式が主流であった。
しかし、無理に引き延ばしたことによりあとになって「あの作品は『軟骨武術会編』で終わらせるべきでしたな」と、語尾が変なオタクにケチをつけられ、かえって名作になり損ねる場合もある。

よって、最近は人気作品でも、無理な引き延ばしはせずキリのよいところでタイトに終わらせることが増えているように感じる。

人気作品でもわりと早めに切り上げる時代になったということは「不人気作品は光の速さで切られる」ということだ。

コミック1巻発売1ヵ月で終了が決まるなどもはや当たり前で、酷い時には発売前から見込みなしと判断され「電子版のみ発売」という滅びの呪文を唱えられることもしばしばだ。
昔であれば「やたら分厚い1巻が出る」というのが打ち切り漫画の定石だったが、最近は紙で出るだけでも御の字であり「1巻が紙で出て、2~3巻がまとめて電子だけで出る」というのが、我々の逆ウィニングロードのテンプレになりつつある、ちなみに「まとめて」というところがミソだ。

もちろん電子版のみであれば際限なく出せるというわけではない、売れなければ、てめえにやる原稿料もギガ数もないのだ。
よって紙本でも電子でも、巻数が多い作品は「作者がその出版社の社長」でもない限りは人気作と思っていい。

今回紹介するのは巻数を見ただけで「オシリス文庫の人気作」とわかるものだ。

『クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間』


タイトルに「7日」とあるが、なんと12巻で完結している、7日やるつもりで始めて3日目に打ち切られるような我々としてはうらやましい限りだ。

ノベル展開だけではなくコミカライズもされており「社長が書いている」という可能性も捨てきれないが、おそらく人気作である。

この物語はフリーターの主人公「比良克樹(ひらかつき)」がコンビニの外にあるタバコ自販機の横にいた、「拾ってください」と書かれた段ボールの札を首にかけた女子「麻友(まゆ)」を拾うところから始まる。
これを読んでいるクーデレ女子のみなさまはもちろん、たとえ不愛想なだけのブスであっても絶対に真似してはいけない行為だ。
現実でこういうことをして声をかけてくれるのはラノベの主人公ではなく、倫理観が著しく欠けている人、運がよくて警察である。

ただ麻友の方も「こうしていれば、ヤレヤレという態度を隠さないが実は面倒見がいいラノベ主人公が拾ってくれる」と思ってやっているわけではない。

実際、当初麻友に声をかけてきたのは倫理観が著しく欠けていそうなタイプの中年男性であり、それを見るに見かねて克樹が助けたのがふたりの出会いである。

しかし、助けられたにもかかわらず麻友の態度は冷淡なものであった。

遅ればせながら「クーデレ」というのは「クール&デレ」の略であり「ツンデレ」を教祖とするデレ一派の幹部である。

主人公に対し攻撃的で、ある意味最初からホットであるツンデレに対し、クーデレは一見冷淡かつ、こちらに無関心であり、それがデレに転じる瞬間がツンデレよりもホットだと評する者も多い。

この「○○デレ」はギャップヒロイン演出としてよくある手法だが、意外とツンやクールとデレとの塩梅(あんばい)が難しいのである。
あまりにも最初のツンが過ぎると、その時点で気が弱いタイプは「すみません! 二度と話しかけません!」と、デレを出す前にいなくなってしまう。
かと言ってあまりにもツンがなくデレが早いと「ッンデレ」になってしまい、ツンデレヒロインとして不完全なうえに発音もしづらい。

しかし、やたらデレが早いヒロインも「チョロイン」や「即オチ」として楽しむ人もいるので、この世界は奥が深すぎる。

麻友は助けてくれた克樹に対し「対価として体を要求されるなんて想定ずみです」と冷めた様子で、克樹はそんな麻友に呆れながらも、声をかけてくるのが著しく倫理観が欠けているだけのおじさんだけならまだいいが、このままだと犯罪に巻き込まれることが目に見えた麻友をほっとくことはできず、結局自分のアパートに連れ帰ることになる。

夜、狭い部屋の中、男女がふたり、なにも起きないはずはなく、と誰もが思うなか、初日はマジでなにも起きない。
もしかして俺はオシリス文庫の中の全年齢対象作品を見せられているのか、と100円ショップ内の「300円商品」をレジに持っていってしまったかのような衝撃を受けたが、もちろんことには及ぶ、しかし及ぶに至る「心情」をかなり大事にしているのがこの作品の人気の秘密ではないかと思う。

結局、麻友の挑発により、なかばなし崩し的に関係を持つふたりだが、麻友がそういった行動に出るのも、既成事実作りというより、ここにいていい理由、そして誰かとつながりが欲しいというものであった。
なぜ麻友がそう思うようになったか、そもそもどうしてあんな危うい真似をしていたかというと、それは麻友の複雑な家庭環境に理由がある。

簡単に言うと、外に突っ立てても倫理観のない奴の餌食になる可能性があるが、むしろ家にいた方が確で倫理ジェノサイダーにやられるうえ、さらにそれには非常に近しい肉親が加担している。
つまり、家の中で身内の鬼畜に食われるか、外で見ず知らずの外道にやられるかの地獄の二択の末、まだラノベ主人公が話しかけてくる可能性がワンチャンある後者にしたという過酷な理由があったのだ。

対する克樹の方も、とある理由で家庭崩壊を経験している。
つまり本作は「家族」にトラウマのあるふたりが寄り添い過去を乗り越え新しい「家族」を築いていくという一大ラブストーリーなのである。
ただそのあいだに頻繁にエロいことをしているが、どのラブストーリーだって省略しているだけで頻繁にエロいことをしているに決まっている。
むしろそこを略していないぶんだけ「丁寧なラブストーリー」と言える。

途中、体の関係からはじまってしまったがゆえに、麻友を好きになるほど「傷をなめ合うだけの関係は嫌だ」と逆に麻友を抱かなくなってしまうという、我々でいうところの「推しキャラを好きになり過ぎてエロ二次創作が見られなくなる現象」が起こるのも共感度が高い。

また、いくらストーリーが秀逸でも、クール部分は本気でぶん殴りたいし、デレは鼻についてぶん殴りたいと言うヒロインではどうしようもない。
麻友がとにかくカワイイというのも人気の秘密だと思う。正直デレに転じるのは早いので「せめて7日はカマドウマを見るような目で見てほしかった」という人には物足りないかもしれないが、クールさは寂しさと弱さの裏返し、デレてからはなにがあってもそばにいる、あなたは私が幸せにするというママみさえ感じるヒロイン力を発揮し、プレイも裸エプロンから、アイドル、マイクロビキニ、猫耳など、さまざまなコスチュームで応じてくれる。




同時に麻友の母親の問題や、克樹の父親のことなど、シリアスな展開も続いていくが、ふたりの関係に盤石感があるため、安心して読み進むことができる。

そして最終的に、家族間の問題もクリアしていき、ふたりは大団円を迎えることとなる。
ちなみに、フリーターだった克樹は途中で就職もしているので「どれだけ愛があっても男が非正規雇用な時点で不安でしかない」という女性読者もニッコリだ。

斬新かつ奇をてらった作品が並ぶ中で本作は、傷を負った男女が出会って絆(きずな)を深めてハッピーエンドという王道中の王道だがあらためて「やっぱ、こういうの好きやわ」と思わせてくれる。

「アザラシの睾丸とかいろいろ食ってみたけど、やっぱり白米がいちばん美味い」
そんな当たり前に気づきたい人はぜひ読んでみてほしい。


クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間
著者:桐刻/イラスト:うなさか/漫画:月曜休み。

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